川口玲子(かわぐち れいこ)
NEC(日本電気株式会社)のシステムエンジニアから研修講師に転身し、さまざまな人と出会えることが何よりの財産だという川口玲子さんに資格取得のきっかけや今後の目標などについてお話を伺いました。現在、専門学校や短大、企業、団体などで研修を行っている川口さんは、受講者ひとりひとりとタイムリーにコミュニケーションをとることを常に心がけているとのこと。最適なアプローチを行うことができ、受講生の信頼感が非常に高い人気講師です。
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お仕事について
現在のお仕事についてお聞かせください
現在は企業研修の講師をしております。IT系のスキルとヒューマンスキル系の講座を担当しています。主に東京で登壇する機会が多いです。また、地元静岡では専門学校や大学で非常勤講師を務めており、ここでもIT系やコミュニケーション系の科目を教えています。
認定講師を目指したきっかけ
企業研修はIT系の講師を中心に行ってきました。数年前からヒューマンスキル系の知識の重要さに気づきました。それは、ITの知識を教えるにしても受講者のモチベーションを上手に引き上げる必要があることを改めて強く感じたためです。そのため、チームビルディングやアサーション、アンガーマネジメントなどヒューマンスキル系のコミュニケーション力をあげる勉強をいろいろして資格も取得しました。ヒューマンスキル系は、受講者の心や行動の変化がとても良く分かり自分自身の学びが非常に多いので、それが本当に嬉しいんです。
具体的なエピソードをお聞かせいただけますか
例えば、コミュニケーション上の悩みを抱えている受講者の場合、自己肯定感が低くご自身を責めるタイプの方が多いので「自分を責める必要はない」ということをお伝えします。すると、ご自身の良いところに気づいて頑張ろう!と受講後には元気になってお帰りになるんです。心の悩みにご自身が気付いて乗り越えるためのきっかけを与えられると感じることが、とても嬉しいです。自分自身も学びが多いため、講師として非常にやりがいを感じます。
IT系の「知識を持って帰っていただく」という研修もよいのですが、コミュニケーション力を改善させるお手伝いができるかどうか、というのが現在の私のキーワードのひとつです。いろいろな人とコミュニケーションを取る場合に声かけ一つでも状況は変わってきます。これは自分自身の体験からなのですが、ビジネスメールにしてもやはりちょっとしたコミュニケーションで関係性が深まることがありますから。
ビジネスメールで関係性が深まった事例もお聞きしたいです
例えば、私の企業研修のお仕事は9割以上がメールで決まります。「この日はお仕事できますか」、「はい、できます」みたいな形で営業さんとメールでやりとりして決まっていきます。そういう中でも、一度もお会いすることなくメールだけでやりとりしている相手がいます。そういう相手とのメールでは、相手の心遣いがあると私は嬉しく感じます。ですから自分自身もまた相手のメールに心遣いをしてやりとりを続けていくと、その相手と自然と良いコミュニケーションが築けていきます。
これに関してかつてエピソードがありました。一度も会わずに仕事のやりとりをずっとメールでしていた方が、退職することが決まりました。お互いずっとメールでやりとりしていたので何だか名残惜しいということになりました。相手は女性だったのですが、私が東京に行く機会にお会いしましょうという流れになり、実際にお目にかかることができました。初めて会ったのにずっとメールでやりとりをしていたので、とても親近感があり本当に思ったとおりの方だと感じました。仕事上のお付き合いから、しかもメールを通じてだけのつながりだったのに、友好的な関係が築けたことがとても嬉しかったですね。その他にも、お仕事のメールの中にも細かな心遣いを入れていくことで仕事がうまく運んだという経験も多いです。ビジネスメールも書き方一つ気を付けると随分違うんだなと常々感じていました。
その「心遣い」という部分にとても興味がありビジネスメールコミュニケーション講座(ベーシック編)を受講しました。そこで、「心遣い」どころか自分でも気付かないところで相手を不快に思わせてしまう場面があったかもしれない、という新たな気付きを得ました。そして、「この知識を多くの人に知らせたいな」という気持ちになり日本ビジネスメール協会の認定講師資格を取得しました。まだまだ私の周囲では「ビジネスメールの研修を受けました」とか「ビジネスメールの重要さに気付いて研修を実施したい」という声が少ないように感じます。ですから、もっと自分の周りから研修を広めたいなと考えています。
今後の目標
講師として目指している方向性はありますか
私が学校関係の仕事や企業の新人研修を担当して感じることですが、最近の若い人はコミュニケーションがうまくないと感じます。SNSなどでは頻繁にやりとりをしていても、メールできちんと文章を書くことやその中に心遣いをのせていくことは学べないと思います。ですから、それを取得していくのはかなり大変なのではないかと思うのです。でも、ちょっとした知識を持っているだけでメールをやり取りする相手との関係性が良くすることはできるのですから、その知識を持たないのは自分自身にとって大変な損失です。若い人にこそビジネスメールコミュニケーション講座(ベーシック編)の知識を身に付けて、相手とうまくコミュニケーションがとれるようになったという成功体験を手に入れていただき、自信を持って社会生活に臨んでくれたら嬉しいです。
個人的な目標としては、IT系の現場でのコミュニケーション改善を促せる研修をこれまでより多く企画して実施していくことです。IT業界では、納期の厳しさや技術者に多く見られる特性からコミュニケーションロスが見られます。具体的には、隣の席の人に指示を出すのに声もかけずにメールするとか、指示は必要最低限しか出さない(これで伝わる内容とは限らない)とか。でも、それもほんのちょっとの心遣いでプロジェクト内での関係性が変わることもあります。「一緒に仕事をやっていて良かったな」、「このメンバーで頑張りたいな」、「メンバーが困っているから力になろう」とみんなが感じるチームを構築するために、マネージャやリーダーが部下にどういうメールを書く必要があるのか。あるいは、メンバー同士のメールであっても読んでいて不快と感じない、重要な情報共有だと思えるメールの書き方ができているのか。そこに研修で気付いていただくことによって、気持ちよく効率的なお仕事ができる環境づくりや、職場のみなさんのコミュニケーション力アップのお手伝いができる講師を目指しています。
ありがとうございました
(2016年5月インタビュー)