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佐藤 安南(さとう あんな)

映像ディレクターとして活躍され、一児のお母さんでもある佐藤安南さんは、子どもや父兄、学校向けのメール教育に尽力されています。認定講師養成講座のきっかけから今後の展望までをお聞きしました。
佐藤 安南プロフィール

お仕事について

現在のお仕事についてお聞かせください。

佐藤安南と申します。映像ディレクターをしております。現在は主に、NHKのEテレ「すくすく子育て」という番組の制作に携わっています。企画・テーマに沿って構成を考え、取材をし、映像を作り上げていくのが仕事です。時には企画段階から関わることもあります。映像ディレクターというと華やかなイメージを持たれる方が多いのですが、実際は違って、取材交渉や撮影許可申請、収録準備など、何かと人のお世話になりながら進めていく、地味な共同作業が中心の仕事です。コミュニケーション能力が必要とされる仕事でもありますね。

映像業界、テレビ業界と聞くと、いろいろな方がいらっしゃるイメージですが、コミュニケーションにはどのような特徴があるのでしょうか。

事前取材や撮影、番組の収録では、直接会ってお話を聞くことになりますが、そこに至るまでのファーストコンタクトは電話やメールが中心です。特に最近はメールでのコミュニケーションが増えています。というのも、取材先をインターネットで検索して探すことが増えていて、ホームページにたどりついたときに、問い合わせ方法がフォームやメールしかないことも多いからです。お電話をさしあげても留守のときや、なかなか連絡がつかないときはメールを送りますね。

取材対象は一般のお母さんから大学の先生まで幅広いと思いますが、コミュニケーション手段はメールが多いのでしょうか。

取材の基本は直接お目にかかることですが、その前段階のコンタクト手段としては、電話とメールが半々ですね。お電話をさしあげたあとは、お話しした内容を整理して、必ずメールを送るようにしています。また、官公庁・企業などに電話をかけると「まずは企画書を送ってください」と言われます。以前は企画書の送付はファクスが主流でしたが、いまは「メールアドレスをお伝えするので、メールに添付してください」と言われることが多いですね。ですので、対象を問わず、メール送信の数は増えています。

仕事で使うメールについて

仕事で使うメールのマナーや書き方は、どのように学んできましたか。

仕事でメールを使い始めた1996年頃は、ビジネスメールの本などなく、情報もほとんどなかったので、文字どおり手探りの状態でした。ここ数年は、アイ・コミュニケーション代表の平野友朗さんの著書で勉強してきました。日経パソコンPC Onlineに連載されているコラム「ビジネスメール事件簿」も毎週欠かさず読んでいます。

これは映像業界に限りませんが、どこからキャリアをスタートさせるかによって、ビジネスマナーの習得方法は違いますよね。たとえば、テレビ局など社員研修がある大きな企業に勤めていた人は、そこで一定の教育を受けるので、基本的なビジネスマナーなどを身につけることができます。だから、そのあとどのような環境に移っても問題はありません。

ですが、教育の機会がない環境で社会人としての第一歩を踏み出した人は、自分で意識して勉強しなければなりません。私を含めて映像の制作会社でキャリアをスタートした人は、残念ながらメールを含めたビジネスマナー研修などは、全くと言っていいほど受ける機会がないというのが現実です。

しかも最近は、不況のあおりもあって、教育にかける時間が激減しています。たとえ新人教育がなくても、いわば丁稚奉公のように、一つのプロジェクトに最初から最後まで携わることができれば、上司の仕事の進め方やビジネスマナーを見よう見まねで覚えることができます。それが、本来のOJTの姿だったはずです。

しかし今は、プロジェクトの一部分だけを、いくつもかけ持ちさせるような働かせ方が非常に増えているのです。そうなると、自分が仕事のどの部分に関わっているのか分からず、仕事の意味や目的が見えなくなり、ただ疲れだけが蓄積していくのです。これでは、ルールやマナーを学ぶ機会はおろか、その気力すらなくなってしまいますよね。本当に残念な状況だと思います。

教えてもらう環境がなくても、人のメールを見て学ぶことはできます。でも、学ぼうと思う気持ちが起きないことには身につかないのが難しいところですね。

本当にその通りだと思います。ですから、私を含め、教育環境のなかった人、ない人は自ら常に意識して、日々のやり取りの中で何とか学んでいくしかないと思います。学ぼうとする意識があるだけでも、ずいぶん違いますから。

私自身はいただくメールの中で、自分が読みやすかったメール、心動かされたメールの良いところを参考にするようにしています。逆に、不快に思ったメールは「他山の石」として、こういうメールは書かないようにしようと自分の戒めにしています。

さまざまなメールがありますね。読みやすく分かりやすく書いてあり、先方の思いやりが文面から溢れているメールもあれば「伝えればいいんでしょ?」とばかりに、ぞんざいでぶっきらぼうなメールもあったり。本当にさまざまです。

特に、メールスキルの差を感じるのは主婦の皆さんのメールですね。私は仕事柄、取材の依頼で、ご家庭の主婦ともよくメールをやり取りします。そのとき、ビジネスメールの型にのっとった、かっちりとしたメールをお書きになる人もいれば、まるでプライベートの携帯メールのようなメールをいただくこともあります。のちに直接お目にかかってお話を伺うと、きちんとしたメールを下さった方の多くは、たいてい、中堅以上の企業にお勤めのご経験があるのです。

ただ、仕事とはいえ、単に「ビジネスライク」にやり取りをするだけでは取材になりません。「マナーがなってないなあ」と思わせるメール「何を言いたいのかよくわからない…」と戸惑うメールをくださる方であっても「この人は」と感じる何かをお持ちの方であれば取材の対象になります。ですから、相手に合わせたコミュニケーションの取り方を常に考える必要があります。

私の仕事の基本は取材です。「あなたの中身を見せてください」という、いわば最初から「深い営業」をすることになります。「お宅を撮影したい」、「あなたの日常生活を見せてほしい」というような、ある意味失礼なお願いを常にしなければならないのです。

ですから、まずは、こちらが怪しい者ではないこと、取材をお願いする理由、その方でなくてはならない理由などを、相手がすぐに理解し、快く受け容れてくださるような方法でしっかり伝えられないと仕事が次へ進みません。

ファーストコンタクトで、どのようなメールを書くかが重要になってきますね。

そのとおりです。そのとき、私が一番大切にしているのは「個人としての感情」です。仕事として伝えるべき情報だけでなく、礼儀や心遣いはもちろんのこと、私個人が企画内容にどのような思いを抱いているか、相手の方のどのようなところに感じ入ったかを、できるかぎり伝えるようにしています。

取材で、先方のご自宅に伺うこともよくあります。プライベートな空間に立ち入って、あれこれお願いをするのですから、ファーストコンタクトで失礼があってはならないと思っています。そうした姿勢はメールからも自ずと伝わると思うので、メールには常に細心の注意を払っています。

認定講師を目指したきっかけ

メールのマナーや書き方、送り方に関して、高い意識をお持ちの佐藤さんですが、認定講師を目指されたきっかけをお聞かせいただけますか。

大きく分けて二つあります。そのひとつ、直接のきっかけは、PTAでの活動経験です。PTAの経験を通じて、子どもたちを守るために、大人たちがメールのマナーやルールを共通認識として持つことが必要だと感じたのです。

私は、娘の通う学校で、何回もPTAの委員・役員を務めました。そうした委員役員の皆さんとのやりとりは、今ほとんどがメールです。だいたい携帯メールが中心ですが、もちろんパソコンを通じたメールの送受信もあります。

今はPTAの世界でもIT化が進んでいます。Wordでの議事録作成はもちろんのことExcelでの会計計算、PhotoshopやIllustratorを駆使した広報誌作成、PowerPointを使ったプレゼンなどビジネスシーンとまったく変わりません。

おそらく、働くお母さまが増えていますし、育児参加の延長としてPTA活動に積極的なお父さまも徐々に増えてきているので、仕事で身につけられたスキルをPTAでも発揮できる方が多くなってきたということだと思います。

しかしその一方、PTA内で交わされるメールは、ビジネスの世界以上にスキルの差が激しいというのが現実です。先ほど主婦の方々のメールについてお話ししましたが、PTA内でも本当にいろいろなタイプのメールをいただきます。もちろん、メールを正しく使えている人もいますが実際のところ、そうでない人のほうが多いですね。

何の用件かさっぱり分からない文章や、絵文字・顔文字だらけで意味不明のメール、名乗りや署名がなくて困惑するメールが、数え切れないほど送られてきます。「メールアドレスが変わりました」とTOに面識のない複数名を入れて一斉送信したメールを受け取ったこともしばしばありました。

PTAは、やはり母親が活動の中心なので、こうしたメールを送る方には「ママ友なのだから」という気安さも恐らくあるかとは思います。しかし、仕事ではないにせよ、PTAもある意味公的な社会活動の一つです。ですから、PTA内でかわすメールも一定のマナーやルールは必要だと私は思うのです。

また、子どもたちもメールを日常的に使っています。スマートフォンを使う子どもも増えてきましたし、パソコンメールも子どもたちにとっては身近なものになっています。こうした状況の中で、子どもたちに教えなければならないことがたくさんあるのに、教える立場にある親がまったくスキルを身につけていないという現状に大きな危機感を抱いたのです。

PTAは子どもたちを守るという重要な役割を担っています。しかし、一部で声高に言われるような、メールやインターネットから子どもたちを遠ざける、使用を禁じるという形で安全を確保するという方法は、もはや時代後れのナンセンスな対症療法だと思います。

子どもたちがメールでトラブルに巻き込まれる前に、正しい使い方を教えることこそが、現代の大人たちの責任だと私は思っています。そこで、子どもを持つ親、特にお母さん方に対してメール教育が必要だと考えるようになったのです。

実際に取り組まれたことがあると伺いましたが。

はい。娘の通う学校のクラス内でも、親どうしの連絡はメールが主流になりつつあります。ただ、個人情報を渡すことになりますので、メールでの連絡を嫌がる方、不安に思う方もいます。

そこで、まずは娘のクラスでメールのルールを決めようと立ち上がりました。幸い、保護者の中に法律関係者がいらっしゃったので、メールアドレス収集における個人情報の取り扱いに関する文書を作成し、クラス全体での共通認識をもつことに成功しました。

どのようなルールを作ったのですか。

クラス内の保護者がメールを送る目的は、学校からの連絡、PTAや部活動の連絡など、子どもの学校活動に関することの連絡のみとする。それ以外の目的でメールは送らない。メールを送るときはBCCで一斉送信する。TOやCCでは決して送らない。件名を必ず書き、本文に宛名を書く。必ず差出人の名乗りを入れる。収集したメールアドレスは、その年度の責任者が厳重に管理し、本人の許可なく勝手に他の人に教えない、翌年度へのメールアドレス引き継ぎは、再度それぞれの承認を得てから行う、などです。

このように、メールアドレスの管理と配信、そして書き方に関する簡単なルールを決めました。決めたルールを保護者の皆さんに説明したところ「メールって、そのように送るべきだとは知らなかった!」、「今まで知らずに間違った方法でメールを送っていました。ごめんなさい」という声が多数届きました。「正しい方法を知ることができてよかった」と安心された方も多かったようです。それ以降、メールのトラブルは娘の通うクラスではほとんどなくなりました。

知らないだけで、間違った方法でメールを送っている人はとても多いのです。特に、仕事をしていないご家庭の主婦は、こうしたメールのルールを知る機会がありません。知らないだけ、教えられないだけなのです。個人的に「あなたのメールはなってない」と指摘されれば角が立ちます。

しかし、PTAやクラスの保護者会などで「メールのルールを学びましょう」とお伝えすれば、快く学んでもらえますし、誤りにも気付いてもらえます。こうした経験からメールのルールを、きちんとした教育プログラムとして伝えていくことの必要性、重要性を実感したのです。これが、ひとつめのきっかけです。

ふたつめのきっかけをお聞かせいただけますか。

ふたつめは、意外に思われるかもしれませんが、2011年3月に起こった東日本大震災、そして福島第一原発の事故です。

恥ずかしいことに、私は東日本大震災が起きる前までは、TwitterやmixiなどのSNSを自由きままな発言の場、匿名性が保持された便利なツールとしてとらえ、あまり何も考えずにつぶやいたり日記を書いたりしてきました。

実際、東日本大震災の直後は、電話がつながりにくい中でTwitterやインターネットは比較的よくつながりました。家族や友人の間で安否確認をしたり、電車の運行情報をTwitterのフォロワーに知らせたり、リアルタイムで情報収集したりなど、SNSはとても役に立ちました。本当に、これほど便利で有益なものはないと感じましたね。震災という極限状況の中で、人々の情報や思いが瞬時に繋がっていくことに、ある種の高揚感を覚えたのも事実です。

そのすぐ後、福島第一原発事故が起こりました。放射能汚染に対する恐怖、電力不足に対する不安など、ありとあらゆるつぶやきや意見がSNS上でみるみるうちに広がりました。もちろん私自身も、そうした不安や疑問、怒りなどをSNSに書き込んだ1人でした。

福島第一原発の事故は、こうした不安、恐怖、怒りなど、それまで人々が見て見ぬふりをしてきたこと、抑えつけてきた感情、これまで表に出さなかった政治的態度などをむきだしにし、一気にネット上に拡散させる引き金でもあったと思います。真剣で建設的な議論ももちろんありましたが、そうでないものもたくさんありました。

たとえば、それまで仲のよかった人が、実はまったく生き方の違う人だと気付かされたり、原発の存廃をめぐって、いきなり見知らぬ人から悪口雑言を浴びせられたり、信頼していた友人とSNS上で激しい争いになったり……。こうしたSNSでの争い、「炎上」と言われるものは、もちろん福島第一原発事故以前から問題になっていました。

しかし、原発事故以降は、そうした争いがもっと増えてきたように思えます。いわば人々の「心のパンドラの箱」が開いてしまったのだと思います。命や暮らしに関わることですから、ある意味必死になるのは当然といえば当然なのですが、極端に感情的な文章、攻撃的な書き込みが増えたように感じています。

私自身も、この時期にSNS上で知り合いからひどい言葉を投げつけられ、深く傷つきました。また、直接自分に関係のない書き込みでも、読むだけで不愉快に感じたり、激しいショックを受けたりするようになりました。そして、こういう状況の中で次第に私は、そもそも私自身の発言が無責任ではなかったのか、選んできた言葉自体に問題があったのではないだろうか、私もこの状況に加担しているのではないかと悩むようになったのです。

書き込めばすぐに反応があり、誰かとすぐに繋がることができる。それがネットを通じたコミュニケーション、SNSの魅力です。しかしその一方では、簡単に人を傷つけ、攻撃する残酷な手段にもなりうる。本当は匿名ではないのに、匿名性が保持されていると思い込んでいるから、みな無責任に言いたい放題となる。相手にどう伝わるかなど関係なく、好き勝手に書き込み、それが自由なコミュニケーションだと思っている。

私自身も、その例外ではない……。遅まきながらそのことに気付いた私は、深く恥じ入り、ひどく落ち込みました。そして、SNSだけでなく、仕事で使ってきたメールに関しても、まったく自信がなくなってしまったのです。メッセージを発信することの責任とはなにか、ネットを通じてコミュニケーションすることとはどういうことなのか、そもそも、私のメールは、文章は、大丈夫なのか。

3か月ほど、なかばうつ状態の日々が続きました。しかし仕事は続いていきます。日常では、人とのやりとり、コミュニケーションの大半がメールなので、まずは自分のメールがどのレベルにいるのかを知りたい、確認しないことには前に進めないと思いました。自分の状況を変えたい一心で、以前から気になっていた、ビジネスメールコミュニケーション講座に参加したのです。

講座に参加していかがでしたでしょうか。

講座に参加して、自分の立ち位置は間違っていないことが分かり、本当に安心しました。その一方で、今までの自分のやり方に、改善すべき点がたくさん見つかりました。

さらに収穫だったのは、コミュニケーションにおけるメールの可能性に気付かされたことです。講座に参加したことで、自分のメールに自信を取り戻しただけでなく、より深くメールを学びたい、自分の強みや興味関心とメールを絡めて、もっと世の中の役に立つような活動をしたいと思うようになりました。そこで、先にお話しした、PTAでのメールルール作成のことを思い出したのです。

自分の娘も含め、子どもたちを見ていると、手で書くよりもまず、メールで文字を覚えています。メールで文字を入力し、予測変換で出てきた漢字を見て学ぶことも増えているようです。また、なにか伝えたい気持ちがあっても、それを会話ではなくメールで伝えることも増えています。

メールは言葉だけで伝えるコミュニケーションなので、文章によっては、相手を傷つけることがあることを理解した上で使わなければなりません。私自身が、SNSを通じて実際に傷つき苦しい思いをしました。しかし、そういう危険性を学ぶより前に子どもたちは携帯やスマートフォンを手にし、メールを使い、SNSの世界へどんどん入り込んでいるのです。

電話よりはメール、それが子どもたちにとっては当たり前になりつつあります。大人以上に、子どもにとってメールはなくてはならないツールだと言えるかもしれません。だからこそ、親である大人が子どもたちにしっかり教える責任がありますが、知識やバックボーンがないことには、何をどう教えたらいいか分からない。

ならば、まずは私自身がメールを深く学んで、周囲の大人にも説明できるようになろう。そして、子どもにもしっかり説明し、教えられるプロになろう。そう思い、認定講師養成講座を受講するに至りました。

今後の活動について

今後の活動についてお聞かせください。

2012年7月に認定講師養成講座を修了し、晴れて認定講師になりました。今後は、主に子ども向け、お母さん向け、学校向けのメール教育に従事したいと考えています。

実はつい最近も、学校関係者に向けたメール教育の必要性を考えさせられる出来事がありました。娘の高校進学を控えていましたので、進学先をインターネットで検索してホームページを調べ、最終的に二校に絞って、問い合わせフォームやメールでそれぞれ資料請求をしました。

そのとき、一校からは用件のみのメールが届きました。必要最小限の情報しか書かれておらず、署名もついていません。私はさらに確認したいことがあったので、そのメールに返信する形で、次のように質問しました。「進学を希望するコースは、学校見学の当日までに決めておかなければなりませんか。それとも、未定でも問題ありませんか」もちろん、講座で学んだルールにのっとって、先方が答えやすいように書いて送りました。しかし、返事は来ませんでした。

もう一校からは、すぐに丁寧な返信メールが届きました。追加の質問への回答もすぐに届きました。両校のメール対応には大きな差があり、私も含めた家族が、後者の学校に良い印象をもったのは言うまでもありません。

しかし、実際に学校を見学してみると、印象がまったく違ったのです。質問しても返事をいただけなかった前者の学校は、学校内の雰囲気がとてもよく、学園長を始め、先生方が熱心で温かみのある対応でした。娘は「とってもよい学校だね」と喜んでいました。さらに、見学後に三日とあかず手書きのハガキが娘宛てに届き、見学時の娘の様子に触れているなど、丁寧できめ細やかな対応が続きました。

一方、後者の学校は、見学したときの先生方の印象がやや冷たく、説明にもホームページで読んでいた内容と、ところどころ矛盾があり、違和感を覚えました。しかも、見学後に同じ資料が二度届くなど、機械的なフォローにも疑問を抱きました。

二校を比べると、前者の学校の方が良い学校であることはすぐに分かります。でも、前者の学校のメール対応は決して良いものとは言えません。実際に見学をして、先生方にお会いしたから好印象に変わりましたが、もし見学をしなかったら、メールの印象を引きずって誤解したままだったでしょう。

このように、メール対応で損をしている学校は多いのではないかと思います。メールのスキルが低い、メールでのコミュニケーションの方法を知らないだけです。対面でのやりとりや、ハガキ・書面などでの対応は細やかな心遣いができるのに、メールを上手に使えている学校は、まだ少ないのではないでしょうか。メールの対応が悪いために検討をやめる親御さんも多いでしょう。

本来の姿は違うのに、実態にともなっていないメールのせいで学生が集まらない、あるいは、保護者とのコミュニケーションに誤解が生じてしまうようなことがあれば、それは学校にとって大きな損失になります。 そうした、学校現場のメールを改善するお手伝いができればと考えています。

メールは便利なものだけれども、メールに依存してはいけない。使うときは、マナーやルールを守り、相手を傷つけないよう、思いやりをもって使わなければならない。メールの書き方という体裁をとりつつ、「文字のコミュニケーションの基本」を、子どもたちや親御さん、そして子どもの教育に携わる方々にお伝えしたいと思います。

さらにもう一つ考えているのは、女性のスキルアップを、メール教育を通じて応援することです。特に主婦の皆さん向けに、メール教育をしたいと考えています。

というのも、今は家庭にいるけれども、再び社会に出て働きたい、自分で起業したいと考えている主婦の方がとても多いからです。これまで取材やPTA活動で知り合った主婦の皆さんは、育児のかたわら、地域の活動に関わられたり、もう一度社会に出るために学んだりと、とても熱心な方ばかりでした。

しかし残念なことに、こうした大きなポテンシャルを秘めた方々の能力は「主婦」というだけで低く見られてしまうのです。また実際のところ、仕事から遠ざかっているせいで、ビジネススキルが身についていない、忘れてしまっている方が多いのも事実です。

スキルアップの第一歩として、多くの女性に、メールのマナーを学んでもらいたい。同じ女性として、母親として、女性のエンパワーメントを後押しする活動をしたい、そう考えています。まずは主婦を中心とした女性向けの自主講座を2013年2月に開催する予定です。

そしてもちろん、一般の方々にも広くメールのルールをお伝えしたいですね。特に同じ映像業界で働く方々には、ぜひ学んでもらいたいと思っています。後輩のディレクターにはことあるごとに「メールのマナーがなってない!」と、直接注意して教えていますよ(笑)。

ありがとうございました